スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜
若干くたびれているにも関わらず、男性は何も気にせずその服に袖を通した。
そそくさとその上から漆黒のマントを羽織ると、顔に刻み込まれていたしわが消えた。
「こんな硬っ苦しい服、着ていられるか……」
文句を零しながら、今まで着ていた質のいい服を汚いものでも触るかのように、摘みながら持ち上げた。
服の袖に刺繍された紋章が、再び私の視界に映り込む。
一本の剣を咥えた獅子が蔦を絡ませ、それを取り囲む四精霊の羽。
今度はハッキリとその紋章を見えたお陰で、何の紋章なのか答えに結びつく。
「貴方は――」
思い浮かんだ一つの答えを紡ごうと思ったけれど、部屋の扉が乱暴に開かれて口が自然と閉じた。
「逃がしませんよ?」
静かに怒る聞き覚えのある声に、はっと扉から入ってくる一人の青年を見つめた。
ここに来る前、この男性を探していたと言っていた人だ。
柔和な顔立ちなのに、それを崩す疲れきった情を浮かべる青年は、ズカズカと乱暴に足音を立てながら、男性の元へとやって来ると腰に手を当てて説教を始めた。