スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜
「どうしていつもいつも……!強引に物事を終わらせるんですか!今日は婚約者の選定のための、大切な舞踏会だと、あれ程口酸っぱく言ってましたよね!」
柔らかい小麦色の髪を揺らしながら、青年は噛み付くように男性に言うけれど、反省の色は伺えない。
寧ろ、どこか関心した様子で青年を見つめている。
「あの魔法式の組み合わせでも、カイルのスキルには意味はなし、か……」
「貴方様のお陰で、僕は十分鍛えられておりますので!ここまで来るのも僕にとっては、容易いことです!」
嫌味を含めて言っているのがこっちにも伝わってくるけど、男性はその言葉すら聞いてない。
重たいため息を零しながら、やれやれとカイルと呼ばれた青年は、男性が持っている服を鷲掴みして奪い取る。
「この服だって今日のために仕立てて貰った、質のいいものだというのに……こんな、ボロ服に着替えて……」
「いや、その服には柔軟性というものが足りない。どんな魔法にも耐えられるこの服に適うものなんてない」
集る虫を追い払うかのように、カイルさんをしっしっと払う素振りを見せると、カイルさんの怒りは余計に悪化したようだ。
「はあ……いいですか?貴方はこの国を統べる者。この国の象徴と称えられる人間なんです。そんな人間が公の場で、強引にか弱い令嬢を拐うなどという行為!許されるわけないでしょうがっ!」
「俺がしたいようにして何が悪い。あんな仕来りに振り回される方が滑稽な話だ」
何を言っても無駄だという事を理解したカイルさんは、諦めて今度は私に向き直る。
「我が主がとんだご無礼をしてしまったこと、深くお詫び申し上げます。加えて、こんなお見苦しいものを見せてしまって……重ね重ねすみません」
怒りが燃えきらないといった感じで、私に頭を下げてくるカイルさんに私は首を横に振った。