スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜
「遅い!そこにある薬草を煎じて。あ、これはトワエさんとこに渡して」
言われるままに物を手渡されて、重たい気持ちを無理やり捨てて仕事に取り掛かる。
「アルドネさん、わしに前に処方してくれた薬が欲しいんじゃが……」
「はいよ!ちょっと待っててね」
忙しなく働くアルドネと呼ばれる私の師匠は、この国では珍しい赤髪を揺らしながら、お客さんを捌く店主であり、私の育ての親と言ってもいい。
一見はどこにでもいる威勢のいい女性。
ただその本性は、歴とした”魔女”なのである。
そんな彼女が営むのが、ここセリオリア王国西部にある小さな街――テリトアの〖妖精の匙〗と呼ばれる薬屋。
この領地一帯の人なら誰だって知っている、名のある薬屋なのだ。
薬の値段は庶民でも手の届く範囲内だというのに、その効果は抜群。
その薬を求めて、今日もどこかに病を患ったお客さん達で溢れかえっている。