スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜
考える暇も与えられず、向こうにされるがままのような状態で、私は冷酷非道と呼ばれる国王様の婚約者となってしまったのだ。
こんな私が。ただのユニークスキル持ちってだけで。
まあ、正式に婚姻するってわけでもないし、レイバート様が言うに、魔法を完成させるまでの間って言っていたけど……。
そもそも魔法を作るっていうことに、いまいちピンと来ない。
「レイバート様ってどんな人なんだろう……」
冷酷非道と呼ばれる人と生活が始まる……なんて、どう想像しても緊張感が常に付き纏っているとしか思えない。
下手なことを口にして罰を下されるなんてことないように、気を引き締めていかなきゃ。
ゆっくり過ごしていいと言われていたけど、元々店の仕事をやっていたお陰で、朝から活動するのが当たり前の私にとっては、二度寝という選択肢は持ってない。
部屋の外を迷惑が掛からない程度に、少し散策でもしようと動き出すことにした。
クローゼットに歩み寄り、寝巻きから何か着替えるものはないかと、そっと開けてみれば、色とりどりのドレスが入っていた。
おまけにもう一度、確かめるように部屋を見渡せば、生活に必要なものは全て揃えられてある。
「不自由のない生活って、こういうことを言うのね」
身一つあればそれでいいとでも言うかのように、揃えられた物達を見て、自然と頭を下げたくなった。