スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜



 威圧的な空気を放っているというのに、その手は温かくて優しい。


「強引に俺が物事を進めて、結果ルフィアを振り回すことになったんだ。見知らぬ場所での生活に不安があるのは当然だろ」


「え?」


「うなされる声が聞こえていたんだ。形だけの婚約者という立場で、寝室まで足を運ぶのはどうかと思って、その……」



 どこか申し訳なさそうにするレイバート様の言葉は、最後までハッキリと聞き取れなかった。


 でも、レイバート様が先程まで座っていた長椅子の前に置かれた机の上にあった物を見て、彼が何をしたかったのかが分かった。


「もしかして、蝋燭を焚いてくれたのですか?」


 今巷で女性に人気があるという、火を焚くと香りがするという蝋燭が、優しく灯っていた。

 起きた時に漂ってきたあの優しい香りは、レイバート様が私に少しでも安らいでほしくて蝋燭を焚いてくれた香りだったんだ。

 まだ彼の質問に答えを返してないと、私は改めてレイバート様の顔を見つめた。


「大丈夫です。ちゃんと寝れました」


 その答えにレイバート様は安堵の表情を浮かべると、放っていた威圧的な空気は優しい空気へと変わるのが分かる。






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