スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜
隣を歩くレイは、初めて会った時みたいに振り回して歩くようなことはせず、優しく腕を取り私の歩調に合わせてそっとリードしてくれているのも、少々むず痒い。
「そしてスキルは恩恵とも呼ばれ、魔法のように生み出せるものではない。だから、尚のこと興味深いものだ」
急に意識してしまった私は先程から何かを熱く語るレイの言葉が、すんなりと入ってきてくれない。
よし、と謎の意気込みをしたレイを包むオーラが変わった、そう思った時にはレイの顔がすぐそこにあった。
「なあ、ルフィア」
「は、はいっ」
返事をするのが早いか、レイがいきなりぐいっと私の腰に片腕を回してきた。
密着する体に全身を流れる血液の循環が速まる。
逃げようにも彼の力が強くて、もがくことすらもままならない。
「レイ、ちょ、ちょっと近い」
「俺の婚約者なんだ。この距離感は当たり前だろう」
「で、でもっ!」
「今、俺の隣を歩いていて……どうだ?」
どうだ、とは一体何を示すのか見当もつかなくて、口を開いては閉じてを繰り返してしまう。