スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜
一体どこから現れたのかと周囲を見渡していると、こちら目掛けて女性が近付いてくる。
「カイル様より伝言を承っております。至急執務室においでになるようにと。マスター、繰り返します。カイル様より伝言を――」
「はあ……もういい、ユツィー。伝言を引き受けた。まったく、あいつは仕事仕事と……」
ため息混じりにレイが呟くと、こちらへ近付いてくるユツィーと呼ばれた女性はピタリお動きを止めた。
新たに眉間にしわを寄せるレイは、如何にも不機嫌そうな表情を浮かべる。
その迫力に私の息の根が止められるんじゃないかってくらい、圧力が直に伝わってくる。
だというのにユツィーさんはレイの表情を伺うことなく、淡々と言葉を並べた。
「マスター、御要件や御要望をどうぞ」
「俺は仕事に向かう。今日からお前に新しい仕事を与える。俺の婚約者である、ルフィアの身の回りの世話を頼んだ」
「任務確認、受理しました」
一瞬だけユツィーさんの瞳が輝いたように見えたけど、本当に一瞬過ぎてよく分からない。