スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜

ユツィー




 レイと別れてからというもの、彼にユツィーと呼ばれた女性は、ただそこにいると言った感じで私の傍に着いて来た。


 そう、ひたすらに着いて来た。


 レイと別れひとまず与えられた自室へと戻り、窓の外を眺めるフリをして薄っすらと窓ガラスに映る少し離れた場所で微動だにしない彼女の姿を盗み見る。


 することのない私には、喋り相手が出来たものだと勝手にそう思い込んでいたけれど、沈黙を貫き通す彼女はまるで空気のように静かにそこに居た。



「私、ルフィアっていうの。よろしくね」



 会話が何一つない沈黙に耐え切れなくなったのはもちろん私で、振り向きざまに思い切って話しかけてみた。



「……」

「あの?」



 気に障ることでもしてしまったのかと内心焦る私に、顔色一つ変えないユツィーさんはただ目を伏せた。


 それが肯定なのか否定なのかも分からなくて口を噤んでどうしたものかと考えていると、完璧なお辞儀と共にユツィ―さんがようやく声を発した。









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