スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜



 まあ、元恋人も私を好きで近づいて来たわけではなく……お目当ての師匠との関係を築くものだったらしいけど。


 昔は極々普通の、そこら中にいるような女の子と何ら変わりなかったのになあ。


  帰っていく二人を見送るために頭を下げると、白銀の腰まで伸びた少し癖のある髪が顔にかかる。


 お店の窓に反射して写った自分の姿を見て、やっぱり人とは違うと実感するしかない。


 唯一お母さん譲りのアメジスト色の瞳は、今日も私らしく輝いているのだけが救いと言ってもいい。



「またのご来店を、心よりお待ちしております」



 とりあえず捌ききった最後のお客さんをお見送りして、師匠が店の扉に〖本日終了〗のドアプレートを掛けて店を閉めた。
 


「あー疲れた疲れた!」



 大きく伸びをしただけの姿だというのに、何故か色っぽさがあるのはどうしてだろう。


 じーっと観察していると、私の視線に気づいた師匠が私の額をペチリと叩く。



「まーだ落ち込んでるのか?」


「つぅ……」



 師匠に叩かれた額が地味痛くて、反射的に手で抑えていると、やれやれとした表情の師匠が横切った。



「いいかい。スキルってものは獲得したくても簡単には獲得できるものじゃない。寧ろ有難い褒美なんだよ」



 それが普通に役立つ優秀なスキルだった場合はね。


 なんて言葉は師匠には言えなくて、口をへの字に曲げて反論の意志を示した。



「それに、女神からの授かり物をそんな風に受け止めるな。男を見る目がないルフィアに、これ以上傷つかないようにと心お優しい女神が授けてくれたんだよ。そう……きっとそうに違いない」


「どうせ見る目もなければ、言い寄ってくる男も居ませんよ」



 不貞腐れる私に師匠は一枚の紙を突きつけて、そこに書かれた内容を顎で読めと言ってくる。


「スキルってものは簡単に他人に分析されないようになってるから、表面上のものでしか分からないけど、一応スキルの効果だよ」


 渡された紙を受け取って、師匠の綺麗な字で書かれた内容は、私が獲得したスキルについてだ。







< 6 / 237 >

この作品をシェア

pagetop