スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜
一緒に寝ていたユツィーは一体何処へ行ったのだろうと、周囲を見渡すけれど寝台には姿はない。
寝落ちするまで確かに隣にいてくれた彼女の温もりは、とても温かかった。
そのお礼を言いたかったのに。
まあお城で過ごす上で会えないことはないだろうから、また見かけたら声を掛けよう。
リビングの方から美味しそうな香りに誘われるようにして、私は寝巻きの上にカーディガンを羽織ると、寝室を出た。
リビングの机の上に並べられた朝食を見るや否や、お腹の虫が動き出す。
「わあ〜美味しそう!」
「一緒に誰かと寝るなんて初めてで、日が昇る前に起きてしまったので、頑張って作ってみました。お口に合うといいんですけど……」
「こんなに美味しそうなんだもの、きっと美味しいに決まって――一緒に、寝て?……えっ?!」
朝食ばかりに気を取られている私だったけど、声の主をもう一度しっかりと見直した。
艶やかな栗色の長い髪に、トパーズのような煌めきを持つ瞳は特に変わりはない。