スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜
グラグラと揺れる本達は、そのまま私目掛けて落ちてくる。
「……!」
やってしまったと反射的に目を閉じて痛みを待ち構えていたけれど、ぎゅっと抱きしめられる感覚に思わず目を開けた。
「怪我はないか?」
私を包み込むようにして、落ちてくる本から庇ってくれたレイの声に、彼が怪我をしてしまったのではないかと狼狽える。
そんな私を見て、何故かレイまでも慌てた様子で私に触れる。
「何処に怪我を負った?すまない、俺が普段の片付けを疎かにしたばっかりに……!」
「レイこそ、怪我してるんじゃないの?!ごめんなさい。私が無闇に動いちゃったから!」
「俺は別に怪我はない」
「え?」
そう言われて、ふと積まれた本の塔を見るけれど、崩れる途中で動きをピタリと止めていた。
「戻れ、己がいた元の場所へ」
その言葉に反応して止まっていた本達は、私がぶつかる前の塔のように積み重なっていく。
最後の一冊が元の位置に戻りきると、思わず拍手を送りたい気持ちになる。