スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜
偽物の婚約者だけど、出来るならレイに向けられる目が穏やかなものであってほしい。
この見た目を受け入れ難いのは重々承知の上で、こちらを見つめる街の人に向かって軽く手を振って笑顔を見せた。
笑顔の効果が効いたのか、街の人達がこちらに向ける視線が少しだけ柔らかいものになる。
私のそんな行動に一つ呼吸を整えたレイは、ゆっくりと馬を走らせる速度を落としたかと思えば、私のことをキツく抱きしめて宣言した。
「我が名はレイバート・グラトリウス。この者は大切で愛おしい我が婚約者だ。まだ正式に発表したわけではないが、以後我が婚約者を温かく迎え入れるように!」
そう言ってレイは乱暴に手綱を握りしめ、その場から颯爽と逃げるようにして馬を走らせた。
街の人達は顔を見合わせて、レイが口にした言葉を飲み込むのに必死な顔をしている。
「じゃあ!あのおねえちゃんはお姫様なんだ!」
「綺麗な銀の髪だったねー!」
「私もあんな綺麗な髪になりたいなあ」
無邪気な子供たちの声が響き渡って聞こえてきて、胸が熱くなるのが分かった。