悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~
社交の場に第二王子と参加するのは、婚約してから初めてで、家族は気合が入っているのだ。……わざと社交の理由で遠くにくに行かされた兄を除いて。

「お兄様、父様の命令じゃなかったら絶対に行かなかったのに、って本気泣きしていたわね」

ふっと思い返して、兄の愛が重いなと思う。

今回、エリオットがアメリアを同伴者として指名したことで、侍女に扮して参加するという作戦を考える必要はなくなった。彼の婚約者として、すんなり舞踏会入りすることができたのは有難い。

というのも、この舞踏会には〝高貴なる令嬢〟ミッシェルも、宰相夫妻と揃って出席する。彼女の上の兄は結婚しており、妻を連れて参加するのだとか。

「参加者として、堂々と動けるのは利点ではあるのよねぇ」

最近ミッシェルの元気がない原因が、この舞踏会だったとしたら原因のヒントが見付けられるかもしれない。

最低限の社交義務をするのは面倒だが、推しのために少しの辛抱である。

「よしっ、頑張るか!」

アメリアは気持ちを固めると、そう意気込んで足を進めた。

会場の受け付けに行くと、係りの者に案内され、いったん煌びやかな会場を少し離れるように進んだ。

第二王子エリオットは、入場の控室で待っていた。めかしこんだ彼は、今夜は一段と王族らしい風格を漂わせて美しい。

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