悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~
すらりとした体に着こなした丈の長いジャケットは、紺色の目に合う装飾が施されていた。スカーフ部分には、赤い薔薇を思わせるブローチがある。
その姿を目に留めた一瞬、アメリアは少し、ドキリとしてしまう。
ゲーム画面では、キャラ的に眼中になくてさらっとしか見ていなかったけれど、現実として目の前にして彼はとても魅力的だった。
メインヒーローであることに納得していると、こちらをじっと見つめていた彼が「ふうん」と言った。
「綺麗に仕上がるもんだ」
それ、褒め言葉じゃないですよね……。
とはいえアメリアは期待していなかった。相手は〝悪役令嬢アメリア〟を嫌っていて、女避けみたいに契約を持ちかけてきた腹黒王子だ。
「このたびは、エスコートのお相手にと選んで頂きまして、ありがとうございます」
ひとまず、アメリアは王族である彼に静々と礼を取った。
「婚約者だ。当然だろう」
「はぁ。左様でございますね」
つい、気の抜けた返事をしてしまう。本来であれば、今夜は彼とヒロインの初めての舞踏会イベントになるはずだった。
教会で出会いを果たした彼は、惹かれて庶民のヒロインを招く。〝悪役令嬢アメリア〟をエスコートして一曲踊った後、不慣れなヒロインにつきっきりで夢中になってしまい、そうして〝悪役令嬢アメリア〟は傷ついて嫉妬を覚えるのだ。
――なのに、その彼が、まだヒロインと出会っていない。
その姿を目に留めた一瞬、アメリアは少し、ドキリとしてしまう。
ゲーム画面では、キャラ的に眼中になくてさらっとしか見ていなかったけれど、現実として目の前にして彼はとても魅力的だった。
メインヒーローであることに納得していると、こちらをじっと見つめていた彼が「ふうん」と言った。
「綺麗に仕上がるもんだ」
それ、褒め言葉じゃないですよね……。
とはいえアメリアは期待していなかった。相手は〝悪役令嬢アメリア〟を嫌っていて、女避けみたいに契約を持ちかけてきた腹黒王子だ。
「このたびは、エスコートのお相手にと選んで頂きまして、ありがとうございます」
ひとまず、アメリアは王族である彼に静々と礼を取った。
「婚約者だ。当然だろう」
「はぁ。左様でございますね」
つい、気の抜けた返事をしてしまう。本来であれば、今夜は彼とヒロインの初めての舞踏会イベントになるはずだった。
教会で出会いを果たした彼は、惹かれて庶民のヒロインを招く。〝悪役令嬢アメリア〟をエスコートして一曲踊った後、不慣れなヒロインにつきっきりで夢中になってしまい、そうして〝悪役令嬢アメリア〟は傷ついて嫉妬を覚えるのだ。
――なのに、その彼が、まだヒロインと出会っていない。