悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~
まだ挨拶を済ませただけだというのに、足はくたくたになってしまっていた。給仕からドリンクをもらって喉を潤し、しばし壁際で休んだ。

「白薔薇派の令嬢達が原因ではないみたいなのだけれど、他に何があるの全く見当もつかなくて……ああ、そういえばまだミッシェル様を見ていないのですけれど、クラーク様は見かけましたか?」

アメリアは、まだダンスが始まっていない会場内の賑やかさに紛れて、そう隣へ質問を投げた。

そこには近衛騎士隊長クラークの姿があった。先程、こうしてようやく会場の壁際で合流したところである。

先日、アメリアは、クラークにサロンの一件について話した。ミッシェルのことで動いているのを、エリオットに知られた件についても教えた。

『殿下も、その件については気にかけてくれるらしい、です……』

『どうして嫌そうなのです? お忙しい中で、協力してくれるところがあるというのなら、有難い申し出でしょう』

多忙であるので、実際に協力者として加わってくれるのかは分からない。婚約者だからアメリアを気にして述べたのもあるのだろうと、クラークは述べていた。

――第二王子とは偽装婚約なので、それはないかと。

アメリアは、寸でのところでそう教えてしまいそうになった。エリオットには『なんか面白くないから協力する』と言われたのである。

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