悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~
「すぐに見つけられるかは分かりません。それに、ダンスが始まった時の方が、みんな自由に動きます。それに便乗して探した方がいいでしょう」

ぴしっとした雰囲気で助言され、アメリアは「おぉっ」と尊敬で目を輝かせた。

「クラーク様、大人の軍人っぽい!」

「『ぽい』ではなく、私は大人で、そして軍人です」

そう答えた彼が、「まぁいいんですがね」と吐息交じりに言って、壁に背を持たれてアメリアを見下ろす。

「お前、挨拶周りをして気づいたとは思いますが、宰相ご夫妻のそばに、彼女の姿はなかったでしょう?」

「夫婦で回っている、とおっしゃっていましたよ」

アメリアは、令嬢設定も外してぽやぽやした顔で言った。

「その言葉を、何も考えず頭に入れたお前は逆にすごいですね。長時間の社交を気遣って、遅れてご参加させる予定であると普通なら推測します」

思わず壁から背を離して、クラークは一つずつ理解させるようにアメリアへ言い聞かせる。

「ミシェル様のお体がそんなに強くないのは、皆も承知です。今回の舞踏会は、時間が長めに設定されていますから、彼女は途中参加の可能性が高い。ご結婚されている兄夫婦様もまだいらっしゃっていないところをみると、共にくるのではないのかと思われます」

「おぉっ、さすがは頭脳派近衛騎士隊長ですね!」

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