悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~
彼はポケットから皺一つないハンカチを取り出し、ぐしぐしとアメリアの目元に押し付ける。

「しかし、あの二人のお気持ちが、もし一緒だったとしても、ミッシェル様が述べたように、現状のままだとご婚約さえ厳しいかもしれません」

兄に世話され慣れているアメリアは、素直に涙を拭われると尋ねた。

「貴族同士の結婚よりも、難しいというやつですよね?」

「そうです。相手は未来の国王ですから、婚約も周りや家臣らの反応も考慮されると思います。ミッシェル様自身、活動がほとんどなく、現在も体力的な部分に問題があると認識されています。そこについても考えなければなりません」

ゲームで〝悪役令嬢アメリア〟が婚約破棄された際、周りの者達が相応しくないとした発言も効力があったから分かる。

今のアメリアは、悪いことは何もしていない。だが、同じくして婚約者として家臣や貴族らへのアピールなども一切していなかった。これまで友達ができなかったくらい、見た目が意地悪っぽいというだけで誤解されてきた身だ。

評判もないとすれば、自分の方こそ結婚も危ういだろう。

――その前には、婚約破棄されるんですけどね!

エリオットは、一目見ればヒロインに惚れるだろう。そうすれば契約も終了で、婚約破棄だ。

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