悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~
「はい。当時、お顔も出されていない状況下で縁談話が次々にあったといいます。一時、彼女にイリスバーグ侯爵家を継がせて女領主とするのでは、という噂話も立ったほどでした」

「お~、さすがミッシェル様!」

アメリアがキラキラとした目で素直に述べると、ヴァレンティーナは注意するわけでもなく、くすりと笑った。

「今も、あの方の実力は申し分ないとしている方々も多くいます。ですから、あとは実際に王妃として公務をこなせるお体であるのか、をアピールできれば、ご婚約についての問題はすぐにクリアできるでしょう」

社交界では、今も尚、妻に迎えたら一族安泰だとも話されている。その期待感が続いている今であれば、早期の印象回復の可能性は十分にあるという。

――活動可能であることを内外に示す。

アメリアは、ソファの後ろに立つクラークと視線を交わした。考えが合致しているこちを察知し、互いに言葉もないまま頷き合う。

「第一王子殿下も二十歳です。そろそろ婚約を、と急かされている今を逃せば、恐らくは陛下も、決断を迫られて政略結婚が組まされる可能性もあります。――ですからアメリア様が、ミッシェル様のために動くならば、今しかないかと」

国外から姫を選ぶ前にと、ヴァレンティーナが告げているのだと分かった。

恐らくは、従姉妹の彼女の耳に少なからず入るくらいには、話が上がり出しているのだろう。

< 176 / 230 >

この作品をシェア

pagetop