悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~
口にした彼女が黙り込む。しかし、少しもしないうちに、ふと、その湖のような綺麗な目から涙がこぼれ落ちた。

「この想いを、隠し続けることなんてできない。そう、君と話をした日に気づいてしまったんだ。……私は、どうしようもないくらいに、彼が好きだ、と」

ぽろぽろと、ミッシェルの瞳から涙が落ちていく。

幼い初恋は、彼を想って身を引くほどの深い愛へ変わった。それを感じたアメリアは、切なさに胸がぎゅっとなった。見守っていたクラークも、涙腺にきた様子で目頭を押さえている。

「彼に、想いを伝えたい。そうして、叶うならば彼と共にありたい」

ミッシェルが、己の願いに耳を傾けるようにして胸に手をあて、一つずつ大事そうに口にした。

「恐らくは、最初で最後の告白になるだろう。貴族の娘として生まれたからには、選べないとは分かっている。……それでも私は、彼がいい」

最後、ぽつりと吐き出されたのは、彼女の本当の想いと言葉だった。

「任せてください。私と彼がいます」

アメリアは、深く頷いてそう述べた。

「彼女の言う通りです。僭越ながら、私も精一杯ミッシェル様をお助けいたします」

目頭から手を離したクラークが、騎士の礼を取って頼もしく告げる。

ここにきてようやく、ミッシェルの顔に少し笑みが戻った。クラークがハンカチを差し出して、アメリアが彼女の涙を丁寧に拭った。

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