悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~
「ふっふっふ。ミッシェル嬢とマティウス殿下のことは聞いてるよ。大丈夫、アメリアのことは兄ちゃんが、きちんと現地まで送ってあげるからな!」

……積極的に協力を申し出た兄が、ちょっと気持ち悪い。

前日から一転して、彼は突如として、アメリアと第二王子エリオットとの婚約も支援する姿勢になっていた。

こうしてアメリアは、毎朝、ロバートに馬車でその場所へと送られた。クラークが臨時の護衛としてミッシェルを迎えに行き、現地で待ち合わせた。

「まるで、彼女だけの騎士になれたようで光栄です」

「……えーっと」

アメリアは、出会った際、自称〝ただの一人の親衛隊長〟を名乗っていたのを思い出しつつ反応に困った。

その後ろにいた公爵家からの数人の護衛達が、とても何か言いたそうな目を向けていた。彼女は悩みに悩んだ末、ここは彼に言わないでおくことにした。

ミッシェルの活動は順調に始まった。宰相閣下に代わって孤児院を訪問し、王都の施設なども回っていった。

「お辛くはありませんか?」

日中の日差しの下、アメリアは子供達のための協会を訪れたあと、再び歩き出したミッシェルを気遣った。

頬に伝う汗に気づいて拭っていると、彼女が見つめ返してきた。

「大丈夫だよ、ありがとう」

にこっ、と微笑む表情は前向きだった。その神秘的な美しい湖色の瞳には、もっと頑張りたいんだという輝きが宿っていた。

< 188 / 230 >

この作品をシェア

pagetop