悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~
以前に涙を見せて以来、彼女は心も強くなったようだった。そうこっそり打ち明けられて、アメリアとクラークは涙が出そうになった。

外回りだけでなく、ミッシェルは宰相の仕事場にも顔を出して、兄と一緒に堂々と手伝うようにもなった。これまで影ながら支えていたことを知っていた者達は、知らぬ者達に自慢するように教えて回り出した。

すると、王宮内での認知度は一気に上がった。外からは、遠方の学会組織やグループからも「個人的な学を我々は支援致します」と正式な表明が出た。

ぜひ一度お越しくださいと、専門機関からも有難いお誘いがかるようになった。幼い頃から国に貢献してきた才女と、ぜひ話したいという。

だからその日、正午過ぎに王宮から出発した。

「すっかり忙しくなってしまいましたね。我々三人、こうして臨時で馬車で移動することも多くなりましたし」

「護衛騎士がいなくって、私は開放的でちょびっと楽しいです」

馬車内には、アメリアとクラーク、そして向かいの座席にミッシェルが腰かけている状況だった。

「一応、私は王宮の近衛騎士隊長で、護衛枠なのですがね」

「えへへっ、だってクラーク様は〝友達〟ですし!」

「お前、緊張感がなくなると令嬢ぽさが薄れますね。まぁ、確かに、我々は〝友人〟です」

すると、二人の会話を見守っていたミッシェルが、口元に指をあててくすりと微笑んだ。

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