悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください！～俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記～

「『美しさにあてられた』と」

クラークが、凛々しくそう告げた。アメリアは、困惑した両陛下とその周り達が、『ひとまず少し休んでくるといい』心配した光景が頭に浮かんだ。

「ぶれないところは相変わらずですね。かえって信頼感が増しました」

その時、人混みの中にいたマティウスとミッシェルのもとへ、数人の騎士が走り寄った。声をかけ、国王達がいる方を指して誘導する。

恐らくは、これから両陛下のお言葉があって、二人が紹介されるのだろう。

その姿を目で追いかけていたアメリアは、次の瞬間、驚愕の光景に気づいて赤薔薇色の目をまん丸くした。

――参着飾った参加者達の中に、ヒロインのソフィア・ハーバーがいた。

特徴のあるセミロングのオレンジ色の髪。それに合わせたドレスに身を包んだ彼女は、あのワンコ系攻略キャラのヒューゴと幸せそうに寄り添い歩いていた。他の多くの者達と同じく、マティウスとミッシェルを近くで祝うべく移動している。

「いつの間に！？」

自分が知らない間に、ゲームヒロインが幸せになっていた。

思わずアメリアが叫ぶと、その線の先に気づいたクラークが、目立つオレンジ色の髪の娘と、第二王子エリオットの部下を目に留めて「ああ」と言った。

「彼女はソフィア・ハーバー。エスコートしている彼は、殿下の親しい部下であるヒューゴ・ケインズで、お二人は来週にもご結婚されるそうです」