悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~
「彼は、殿下達にとって幼馴染みたいなものでもあったようで。先日、婚約祝いの言葉をもって、私も仕事の引継ぎがてら同行して会いに行きました」

「ん? それってつまり……殿下は、彼女とも既に面識が……?」

「部下が世話になっている、とご挨拶されていましたが、それが何か?」

何か問題でも、という目を向けられたアメリアは、ますます困惑した。自分の話題が出たと気づいたエリオットが、一体なんだと様子を見守っている。

「でも、クラーク様、あの、彼女に会った瞬間、殿下が見惚れていただとか」

「はぁ? あるわけがないでしょう。普通の娘ですよ」

「あんなに美人なのに!? ほら、もう一度見てくださいよっ、微笑まし気に歩く横姿だけでもキュンとくる美少女ですよ!?」

アメリアは、人混みの向こうに見えなくなりそうな、オレンジ色の髪をした彼女をビシリと指して主張した。

クラークが、律儀にもそちらを見やる。確認はしましたと言わんばかりに一拍置いてから、アメリアへと目を戻すが言葉はない。

この人、本気で『普通枠の女の子』だと思ってる。

そういえばミッシェル以外、彼は眼中にない〝難航不落の攻略キャラ(本物のストーカー)〟だったと思い出した。

「あの、でも、殿下の方は、他の方々と揃って見惚れたりしていたんでしょう? ほら、あの愛らしさですし、もう何もかも全部可愛いし」

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