悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~
「クラーク様は、ミッシェル様の幸せを妹のように想っているのですって。それで個人的にもお守りしていたところ、偶然にも私達は友達になったのです。――熱き友情でしょう?」

「それは素晴らしいことだな!」

即、ロバートが大賛成の勢いで同意した。

恐らく彼は、妹というキーワードしか耳に入れていないだろう。それなのに納得百パーセントの笑顔を前に、単純な兄で良かったな、とアメリアは思った。



※・※・※



軍事の会議への出席を終え、第二王子エリオットは自身の執務室へといったん引き上げた。まとまった案件の書類を確認し、許可印を押す。

「殿下、忙しいのも分かりますが、美しさに一目惚れして婚約した令嬢でしょう? なら、きちんと交流を取っていると見せておいた方がいいですよ」

届ける書類を待っていた部下の一人が、そう言ってきた。

いきなりなんだと思って、エリオットは顰め面を上げた。確認してみれば彼だけでなく、室内に居合わせた他の部下らも似たような表情だ。

「何か言いたいことでもあるのか?」

「だから、婚約者様ですよ」

問い返して即、別の方向にいた部下が、終業準備で荷物を移動しながら言葉を振ってくる。

婚約者といえば、誕生日を迎えていない十五歳のアメリア・クラレンスだ。同年齢

少女よりやや華奢で、背中に流したチェリーピンクの髪は目立つ。

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