悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~
気が強そうで、日頃からお高くとまっていそうな雰囲気をまとった、赤薔薇色の目をした伯爵令嬢である。

「なんだ、まだ王宮に通っているのか?」

許可を出した翌日から、四日連続で出入りしていたのは耳にしている。

すると、先に質問してきた部下が目を丸くした。

「あれ? ご存知ないんですか? あれから二週間以上、ほぼ毎日のように通われていますよ」

そう言い返されて、少しエリオットはむすっとする。先日届いた手紙の返事にも、そんなことなど書かれていなかったので知らない。

そもそも手紙だって、当初はすぐに送る手間などかけないつもりだった。

だが、婚約が成立した以降、彼女から全く音沙汰がなかったのだ。王宮での目撃情報は耳に入ってくるのに、自分の婚約者であることを口にすることもなく、気づけば帰ってしまっているという状況だ。

――普通なら「婚約者の殿下によろしく」の伝言くらい、あってもいいんじゃないか?

一時的な偽装婚約であるとは、アメリアも分かっている。見合いでの交渉の中で、堂々と婚姻活動を言ってきたくらいだ。

でも、存在を完全に無視されているようで、もやもやしてしまい、気づけば手紙を送っていた。

婚約者としての建前上の手紙だ。しかし、こちらも適当に書いたとはいえ、「本当に女が書いた手紙か?」というくらいにそっけない返事がきた。

「殿下? どうかされましか?」

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