悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~
アメリアは、契約を提案した際にも冷静に聞き入っていた。小さく息をつき、あの大人びた目で見つめ返してきて、自ら交渉を固めてまできた令嬢だ。
もしものことがあったら、君と結婚してもいい。
不意に、その近衛騎士隊長が述べたことが想像された。彼女が、エリオットの知らない顔で笑って、手を取り合う光景が脳裏に浮かんだ途端、どうしてか胸の辺りがぎゅっとした。
そもそも、いつの間に近衛騎士隊長とそんなに仲良く?
その『もしものこと』というのは、探している結婚相手として、こちらの契約について何か話したということか……?
偽りの婚約者だ。それなのにエリオットは、そう考え出した途端になんだか気になってきてしまった。
「お前ら、ちょっと席を外せ」
「は? 殿下、いきなり何を――」
「いいから。少し外に出てろ」
エリオットは、いったん部屋から全員追い出すと便箋を取り出した。社交辞令ながらも前回よりも、やや丁寧に婚約者らしい言葉も連ねて手紙を書いた。
すると後日、またしても形式的なそっけない手紙が返ってきた。
一つ違っていたのは、エリオットが手紙に、初めて書いた質問への回答もプラスされていたというだけだ。
『契約のことは誰にも話していません。ご安心くださいませ』
――たった、その一文だけだった。
相手の近衛騎士隊長には、笑顔も見せてずっと喋っているらしいのに、俺には社交辞令の手紙もたったこれだけなのか?
なんだかエリォットは、それがすごくもやもやした。
もしものことがあったら、君と結婚してもいい。
不意に、その近衛騎士隊長が述べたことが想像された。彼女が、エリオットの知らない顔で笑って、手を取り合う光景が脳裏に浮かんだ途端、どうしてか胸の辺りがぎゅっとした。
そもそも、いつの間に近衛騎士隊長とそんなに仲良く?
その『もしものこと』というのは、探している結婚相手として、こちらの契約について何か話したということか……?
偽りの婚約者だ。それなのにエリオットは、そう考え出した途端になんだか気になってきてしまった。
「お前ら、ちょっと席を外せ」
「は? 殿下、いきなり何を――」
「いいから。少し外に出てろ」
エリオットは、いったん部屋から全員追い出すと便箋を取り出した。社交辞令ながらも前回よりも、やや丁寧に婚約者らしい言葉も連ねて手紙を書いた。
すると後日、またしても形式的なそっけない手紙が返ってきた。
一つ違っていたのは、エリオットが手紙に、初めて書いた質問への回答もプラスされていたというだけだ。
『契約のことは誰にも話していません。ご安心くださいませ』
――たった、その一文だけだった。
相手の近衛騎士隊長には、笑顔も見せてずっと喋っているらしいのに、俺には社交辞令の手紙もたったこれだけなのか?
なんだかエリォットは、それがすごくもやもやした。