天空の姫Ⅱ ~二人の皇子に愛された娘~



すっかり自信を無くした主を見て朱雀はため息をついた。


しかし何も言えず皇太子宮を出て行った。


紅蓮は自身の裂けた衣を見つめた。


月影に関わるなと言われながらも、どうしても白蘭を見ていたくて人間界に通っていた。


病になる前の白蘭に戻ったようだった。


姿を見られたとき、すぐに逃げるべきだった。なのに、掴まれた腕を振り払うこともできずコロコロと表情を変え笑う白蘭を見ていたいと思った。


何も言わないつもりだった、だが私の名前をもう一度呼んで欲しかった。


結ばれなくても、もう紅蓮の心は白蘭の元にあるのだ。


今の白蘭は人間だ。


少し転んだだけで血が出て蘇生術も効かない弱い存在だ。


人間界にいる間だけでも守っていたい。


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