天空の姫Ⅱ ~二人の皇子に愛された娘~
「…白蘭、大丈夫か?」
黙ったままの私に呼びかける男。
「白蘭…って私の事?」
「…何を?」
「あなたは?…もしかして私を助けてくれた人?…えっと…助けていただき感謝致します」
戸惑いながらも丁寧に御礼を言う私を男は驚いた顔で見つめている。
「私のことわからないのか?月影だ」
「月影?」
名前を呼ぶと嬉しそうに頷くが私にはわからない。そもそも自分の名前さえわからないのだ。
「ご、ごめんなさい。私、自分のこともよくわからなくて…」
「本当に…忘れてしまったのか?」
「…」
「私のことも、自分のことも全て?」
「…ごめんなさい」
私の様子に月影はしばらく考え込んだが、すぐに笑顔になった。