天空の姫Ⅱ ~二人の皇子に愛された娘~
兎月が帰ってきていたが心に余裕はなかった。
一族が殺された日、私は天女様に連れられて、この宮へ来た。
天女様から法術を習い、書物を与えられ、命を狙う天帝と天后から守ってもらった。
翡翠の腕輪を握りしめると月影の頬に一筋涙が伝った。
「月影様…?」
「知っていたのか?…私と過ごした二千年の間、お前は知っていたというのか?」
「月影様…まさか、記憶が?」
「そうだ。すべて知った。お前は知っていたのだな。」
「はい…兎月は知っていました」
さぞ滑稽だっただろう。親の仇とも知らず私は敵に尻尾を振り、愛されたいなどと二千年も願っていた。
そして一番近くにいた者が、そのことを知り黙っていた。
毎日天帝と天后を父上・義母上と呼び挨拶に行った。
天空石を貰った時も、天后から氷結針を受けた時も、この天界での唯一の友は私に黙っていたのだな。
「あの…月影様お許しください」
「…責めはしない」
そう責めはしない。だがこの二千年の絆は大きく崩れたのだった。