天空の姫Ⅱ ~二人の皇子に愛された娘~
「いや。朱雀の言うとおりだ。いつまでも虹彩樹の庭にいたところで白蘭が現れるわけもない」
「紅蓮様…」
「死ぬことが出来ぬのなら白蘭の分まで生きるしかない…」
身分が低いから葬儀すらできない。
私の妻なのに…。
「…朱雀、喪に服す。黒服を持ってこい」
すぐに朱雀が準備しに行く。
何かをしていないと白蘭のことばかり考えてしまう。
それから私は白蘭の死を紛らわすため政務に勤しんだ。
だが、紅蓮に感情はなくただただ冷静に判断を下し、睡眠もとらなくなった。
はじめは虹彩樹の庭で泥酔するよりも良いと思っていた朱雀も、あまりの極端さに声をかける。
「紅蓮様。働きすぎです…」
「…」
「息抜きに虹彩樹の庭や岩場に行っては?」
「…もう行き飽きた」
何度、白蘭を求め無意識に足を運んだことか。
その度に白蘭の幻覚幻聴に惑わされ、死を痛感し絶望した。