天空の姫Ⅱ ~二人の皇子に愛された娘~
これでは月影を呼べないわ。
「どうだ?」
部屋の外から宦官の声がする。白蘭は落胆しながら正直に話した。
「私はただの薬売りです。貴妃様は私には救えません」
宦官は「そうか」とだけ言うと下がり、部屋の扉があいた。
そして口を覆った衛兵が数人入ってきて白蘭を捕らえ牢に閉じ込めた。
「何をするの!?私を街に返してよ!」
「それは出来ない。お前を街に返せば疫病が広まる」
「私は病なんてかかってないわ!」
「万が一を防ぐためだ。多くの民を守るための犠牲だ。運が悪かったな…数日後、他の医者と火葬だ」
「そんな…」
あまりの横暴さに絶句する。
そして木蓮さんの言っていた「皇宮の恐ろしさ」を実感した。
勝手に連れてこられて勝手に生死を決められる、私達平民の命はそれだけ軽いのだ。
白蘭はうなだれ、どうしようもない事実にただ怯え泣いた。