天空の姫Ⅱ ~二人の皇子に愛された娘~
そしてすぐに気づいた。
湖に浮かぶ白蘭の衣に…。
「白蘭!!!」
震える足で湖に近づき足を入れようとした時、朱雀に止められる。
「正気ですか!紅蓮様!!」
「放せ!!白蘭がっ!白蘭がっ!!」
なぜだ。なぜ私を置いていった!
「放せえええ!!」
白蘭は忘却湖に自ら入ったのだった。
紅蓮は衣を手に取ろうともがくも朱雀と侍従たちに止められた。
「白蘭!!白蘭!!!」
朱雀は泣き叫ぶ主に心を痛めながらも必死に引き止め言った。
「紅蓮様!やめてください!忘却湖に入ったら白蘭のことも、その思い出も私たちのことも全て忘れてしまうんですよ!?」
すると紅蓮は暴れるのをやめ、その場に泣き崩れた。
偉大な戦神であり魔界の鳳凰である紅蓮が皆の前で涙することは初めてだった。
その光景は侍従の誰もが心痛し、目をそらしたくなるほどだった。
こうして魔界で白蘭は死んだのだった。