天空の姫Ⅱ ~二人の皇子に愛された娘~
「…黒服は妻が亡くなったからだ。ろくに葬儀もできず何年も経ってしまった…私だけは妻を忘れたくないからいつも黒服を着てるのだ」
そうだったんだ…奥さんがいたことになぜか私の胸は痛む。
黒服ってことは喪服ってことだもんね。何年も経っているのに…亡くなってもまだ愛しているんだわ。
「仮面は…?」
「これは妻を病から救うために左目と薬を交換したのだ…結局、間に合わず死んでしまったが…」
「そう…」
スッと紅蓮の左目の仮面に手を伸ばした。逃げられると思ったが彼はその場を動かなかった。
「痛かったでしょう」
「いや。妻の方が痛かったはずだ」
そんなはずはない。体の一部を取られることはきっと、とても痛いわ。
そして紅蓮は助けられなかったことを悔いている。
この人は優しい人だから自分のことを責め続けるのだ。
「紅蓮の奥さんはきっと幸せよ」
「…」
「こんなに愛してくれる旦那さんがいるんだもの」