天空の姫Ⅱ ~二人の皇子に愛された娘~


「…黒服は妻が亡くなったからだ。ろくに葬儀もできず何年も経ってしまった…私だけは妻を忘れたくないからいつも黒服を着てるのだ」


そうだったんだ…奥さんがいたことになぜか私の胸は痛む。


黒服ってことは喪服ってことだもんね。何年も経っているのに…亡くなってもまだ愛しているんだわ。


「仮面は…?」

「これは妻を病から救うために左目と薬を交換したのだ…結局、間に合わず死んでしまったが…」

「そう…」


スッと紅蓮の左目の仮面に手を伸ばした。逃げられると思ったが彼はその場を動かなかった。


「痛かったでしょう」

「いや。妻の方が痛かったはずだ」


そんなはずはない。体の一部を取られることはきっと、とても痛いわ。

そして紅蓮は助けられなかったことを悔いている。

この人は優しい人だから自分のことを責め続けるのだ。


「紅蓮の奥さんはきっと幸せよ」

「…」

「こんなに愛してくれる旦那さんがいるんだもの」


< 65 / 255 >

この作品をシェア

pagetop