天空の姫Ⅱ ~二人の皇子に愛された娘~
以前と同様にすれ違う人々から蔑まれるが、月影は胸を張って歩いた。
私が天帝となればこの者達はどのような顔で私にひれ伏すのか考えただけで愉快だった。
天宮に入ろうとした時、天帝と天后の会話が聞こえ足を止める。
「もしや月影は二千年前のことを思い出したのか?」
「まさか。天帝陛下おやめください」
「だが、月影が反抗するなど初めてだぞ。やはり母親のことが原因なのか?」
「陛下。白蛇族はもう滅びたのです。私が目の前で処刑したのご覧になったでしょう?」
「そうだな…月影も一族のことは覚えていない…安心だ」
どういうことだ。白蛇族…。それは母の一族だ。
確かに私は母のことや一族のことを覚えていない。
忘れていることが安心だと?…何かがおかしい。
不審に思った月影はすぐにまた記憶水晶の間に向かった。今度は騒ぎにならないように衛兵を気絶させ中に入る。
前と同じように水たまりに翡翠の腕輪を入れると不注意にも白蘭にもらった首飾りも一緒に落ちてしまった。
今は時間がない。取り出しまた水たまりができるまで待つには衛兵が目覚めてしまう。
月影は翡翠の腕輪と白蘭の白い羽の首飾りが水についたまま、記憶を覗いた。