今宵、彗星
ー坂口宵(サカグチ ヨイ)ー
【お前、重すぎ、俺じゃ無理だわ】
彼氏、いや元彼というのだろうか、から来た一通のメール。今どきメール?否、LINEは恐らくブロ消しされた。
「重い」このセリフは何度言われただろうか。10回を超えた辺りでもう数えるのも辞めてしまった。
別れる時はいつもこれ。

「重い」「俺には受け止め切れない」「他当たって」

一体俺の何処が重いのか自分には一切わからない。
朝イチの電話も、連絡先の確認も、好きだからしてること。
てか、俺のこと好きだったら受け止めきれるよね?受け止めきれなかったんだったら俺のことそこまで好きじゃないってこと。

何が、、、重いだよ。

いや、本当はわかっている。これが重いんだ。「俺のこと好きなら」これがダメなんだと。

俺はゲイだ。多分、生まれた時から、ゲイ。

初恋は保育園の先生。ありがちな事だと思うだろうが俺の場合は男の先生だった。
あろうことかその先生にプロポーズまでしていた。
幼児でなければどうなっていたか、本当に若さとは大切なんだなと学んだ。

今でもあの先生のことは思い出す。
プロポーズした時ちょっと困ったような顔をしながら
「宵くんが大きくなったらね」
と笑って頭を撫でてくれたあの顔を。

5年前、先生が結婚したことを聞いた。近所のおばさんたちの井戸端会議で先生の話題が出ていたから何かと思えば、

「そういえば、○○保育園の△△先生結婚した
らしいのよ〜」「え〜!」「そうなの〜?」

驚愕、吃驚、絶望、

やっぱり今でも俺は先生が好きなんだなと感じた。

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