今宵、彗星
ー臼井彗(ウスイ ケイ)ー
学校に着く。今日はどんな手を使って僕の精神と肉体を痛みつけて来るのか。僕はそればかり考えていた。

一瞬。

青色の何かを目が捉えてからすぐに目の前が歪み、気づいた時には玄関前のアスファルトに僕の頬が打ち付けられていた。
それとほぼ同時にコーンっというプラスチック
特有の音が聞こえた。

笑い声。

頭上から数人の男が笑う声が聞こえる。
何とか働かない頭と硬いアスファルトにぶつかり痛む体を起こし、何が起こったか状況を整理しようとした。
僕の制服と髪の毛は濡れ、青色の「トイレ用」と書かれたバケツ。倒れる寸前に見た濁った何か。笑い声____

なるほど、トイレの汚水が校舎の2階か3階からか降ってきたわけだ。
もちろん、偶然僕に命中してしまった訳ではなく、悪意のある、嫌がらせ。
さすがにこれは堪える。寒い。まだ5月だぞ?しかしここで声を出せば問答無用で数人リンチにされる他なかった。ないと、考えた。仕方ない、保健室へと行き、
「トイレをしようと思ったら眩暈がして、掃除用のバケツに頭をつっこみました」
と言う他無さそうだ。
これで何回目だろうか。
すっかり保健室の常連となってしまった。流石に怪しまれはしないだろうか。

僕はまた心配事が増えた。
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