今宵、彗星
ー模木彗(モギスイ)ー
いつも通り何となく授業を受けて、何となく友達と談笑し、何となくご飯を食べて、また何となく授業をうけていた。
ふと空を見上げると、飛行機が飛んでいて、飛行機雲が尾を引いていた。

その一瞬私は見とれる。

パイロットになる。いつからかそう思っていた。
5歳くらいだろうか白い機体が青い空によく映えて、幼い私の記憶に鮮明に焼き付いた。
それから私は飛行機というものに興味を持つようになり、その興味の対象は機体からあれだけの大きさのものを牛耳るパイロットへと移っていった。
普通、女の子ならばCAさんになりたい!と思うところかもしれない。
でも私は違った。

パイロットになるためには色々な制限があるらしい。
誰でもなれる訳じゃなくて、まず第一に身長。158cm以上はなくてはならないらしいのだ。私は女にしては背が高く170cmあるのでらくらくクリア。

そして次に目に異常がないか。
パイロットは乗客や従業員の命を預かっている。色彩異常でもあったら万が一のことになりかねないのだ。
これも、私はクリアした。
お母さんにお願いして眼科へ連れてってもらい、診てもらったから確かであろう。
何かと理由を聞きたがる母も、もし万が一我が子の体になにかあったら早めに知っておいた方がいいと病院へ行くのを了承してくれた。

こうして見事基本の2つの条件をクリアした訳だがそれでも私は思っている。
きっと自分は夢を叶えることは出来ないだろうと。

娘がスラックスを履くことすら快く思っていない人が「男の子のなりたい職業トップ10」にランクインしているパイロットに、娘をさせるとは思わないからだ。

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