手が届かない向こうへ
頑張れば願いは叶う。

色んな場面で耳にする言葉を信じて、いつかを夢見て、ただひたすらにお兄ちゃんを見つめてきた。



なのに、何故?



遺影を前にしても、泣き腫らした目のおばさんやおじさんを前にしても、涙は出なかった。

悲しすぎると涙すら出ないのだと知った。

見慣れたはずの笑顔のお兄ちゃんの写真。

心臓から血が吹き出してるんじゃないかと思う位胸が苦しくて痛い。

何も考えられなくて、私はただぼーっとしたまま、黒いフレームの笑顔の写真を見つめてた。


「最後に見てあげて」


泣きながらおばさんに言われて、私はお兄ちゃんの死に顔を見た。

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