手が届かない向こうへ

悲しい世界

季節は変わって行く。

世界は動いて行く。

だけどそこには一番いて欲しい人だけがいない。

お兄ちゃんがいない世界がこれほど悲しく、虚しいものだと知らなかった。

何を見ても、誰といても心が泣いている。

思い出すのはお兄ちゃんとの記憶ばかり。



似た背中を見て胸がざわつき、違うと分かりひどく落ち込む。

すれ違い様にお兄ちゃんが好きだったコロンの香りを嗅いで、姿を探す。



いるはずがないのに



そんな事、本当は嫌という程分かってたけど、それでもまだどこかで期待している。

そうしないときっと、この世界を私は生きていけない。
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