惹かれたのは強く、眩しい子で。
バンッとドアを力任せに開けば、そこは8歳の子どもには目を覆いたくなるような光景が広がっていた。
何人もの大人が泣き叫ぶ子ども達を何度も叩いていた。
その中心では、あの子が施設長に首を絞められ、そのまま体を持ち上げられていた。
ドアが開いた音が聞こえたのだろう。
睨みつけるようにドアを見る大人たちの目が驚きに変わっていく。
「おっ…、王子!?どうされましたか!!」
首を絞めていた手を離し、こちらに駆け寄ってくる施設長
いきなり離されたあの子は地面に叩きつけられ、ゴホゴホと咳き込んでいる。
「エルシー様、ここはお任せください。」
その言葉に抉られたように痛い胸が固まった足を動かした。
慌ててエルシーに駆け寄った施設長を無視し、いつの間にか子ども達が囲ってる中心を目指す。
「っ、だ、大丈夫っ…。守れ、なかった、ね。ごめんね。」
女の子たちに寄りかかりながら、泣いてる子たちを慰めてるあの子
…自分が1番痛い目にあったはずなのに。
笑いながら、大丈夫と言い張る姿
首には、うっすら跡がついている。
「私こそごめんなさい!またミアに酷いことっ!」
「泣か、ないの…。私、なら平気。」
止まってしまった足
子ども達の輪の外で多くの子どもに慕われているのを見て、自分の出る幕はないと悟る。
…でも、自分のできることはある、と。
もう一度強くあの子の姿を目に焼き付け、ハミルの元へ戻った。