囚われて、落ちていく
「兄さん、都麦ちゃんから電話」
後ろに控えていた瞬作が、刹那に耳打ちする。
「都麦?わかった。
美波嬢、少し席を外す。何でも好きなものを食べてていいから」
「はい」
美波は、見逃さなかった。
一瞬の、刹那の優しい微笑み。
あーさっきの穏やかな微笑みは“都麦”と言う人を想ってのことかと━━━━━━
「ねぇ!」
「はい」
「“都麦”って、誰なの?」
美波が瞬作に問いかけた。
「それは、言えません」
「は?なぜ?」
「兄さん…いや、若頭を怒らせる事になるからです」
「………」
「貴女“でも”わかりますよね?
若頭を怒らせる事が、どれ程のモノか……」
「……え、えぇ…
でもあんな笑顔……もしかして、奥様?」
真顔だった瞬作の顔が、一瞬反応する。
「そうなんだ…」
「ですから!」
「貴方って、分かりやすい人…!
どんな方なの?奥様って。
刹那様があんな表情をするんだもの。きっと素敵な方なんでしょうね…!」
「はい、とても……」
「え━━━━??」
「は?」
「貴方もなの?」
「はい?」
「貴方“も”惚れてるんだ」
「俺は何も……」
「私のこと、ただのバカな孫娘だとでも思ってるの?
私だってわかってるのよ?
お祖父様を都合よく動かす為に、私を利用してること。どうせ、弱みでも握ろうとしてるんでしょ?」
「………」
「ねぇ、私に協力してよ。
貴方にとって、悪い話じゃないと思うわよ?
奥様を手に入れたいと思わないの?」
「………」
「ねぇ、聞いてるの?」
「……俺にとって“悪い話”は、兄さんを裏切ること。
二人を引き離すこと。
都麦ちゃんを手に入れても、俺は幸せになれない。
そんな恐怖を一生背負うくらいなら、今のままが“幸せ”です」
「そんなに恐ろしいの?刹那様」
「はい。“そんなに”恐ろしい人ですよ」
「まさか……!?私は警視総監の孫よ?」
「兄さんに“例外”は存在しないよ」
瞬作の言葉が、風を切るように響いた。
後ろに控えていた瞬作が、刹那に耳打ちする。
「都麦?わかった。
美波嬢、少し席を外す。何でも好きなものを食べてていいから」
「はい」
美波は、見逃さなかった。
一瞬の、刹那の優しい微笑み。
あーさっきの穏やかな微笑みは“都麦”と言う人を想ってのことかと━━━━━━
「ねぇ!」
「はい」
「“都麦”って、誰なの?」
美波が瞬作に問いかけた。
「それは、言えません」
「は?なぜ?」
「兄さん…いや、若頭を怒らせる事になるからです」
「………」
「貴女“でも”わかりますよね?
若頭を怒らせる事が、どれ程のモノか……」
「……え、えぇ…
でもあんな笑顔……もしかして、奥様?」
真顔だった瞬作の顔が、一瞬反応する。
「そうなんだ…」
「ですから!」
「貴方って、分かりやすい人…!
どんな方なの?奥様って。
刹那様があんな表情をするんだもの。きっと素敵な方なんでしょうね…!」
「はい、とても……」
「え━━━━??」
「は?」
「貴方もなの?」
「はい?」
「貴方“も”惚れてるんだ」
「俺は何も……」
「私のこと、ただのバカな孫娘だとでも思ってるの?
私だってわかってるのよ?
お祖父様を都合よく動かす為に、私を利用してること。どうせ、弱みでも握ろうとしてるんでしょ?」
「………」
「ねぇ、私に協力してよ。
貴方にとって、悪い話じゃないと思うわよ?
奥様を手に入れたいと思わないの?」
「………」
「ねぇ、聞いてるの?」
「……俺にとって“悪い話”は、兄さんを裏切ること。
二人を引き離すこと。
都麦ちゃんを手に入れても、俺は幸せになれない。
そんな恐怖を一生背負うくらいなら、今のままが“幸せ”です」
「そんなに恐ろしいの?刹那様」
「はい。“そんなに”恐ろしい人ですよ」
「まさか……!?私は警視総監の孫よ?」
「兄さんに“例外”は存在しないよ」
瞬作の言葉が、風を切るように響いた。