【短編】貴方だけを愛しています
「あんたたち、あの2人のどっちか貰ってくれ」



「「「『…………?』」」」



「……お兄様?」



「結婚すんのか破談にすんのか、それは慧斗君が考えれば良い。こっから先は当人の話にすれば良いんだから。ただ、簡単に女を抱ける俺でも、双子だろうと何だろうと、断然妹が可愛くて綺麗だが、呑気で生意気に育ったあいつらを抱くのは無理だ」



「ちょっと、待って下さい!」



「待たねぇよ!唯来を苦しめたくねぇっつってんだろーが!!」



「……っ……、」



「政略結婚っつーのは、時に両想いになるかも知れねぇよ。出会いはどうであれ、幸せになるかも知れねぇよ。でもな、唯来は親に家出されてんだぞ?この10年、年賀状に“家族仲良くしてますか?”としか書いて来ねぇヤツらの娘となんて、基本何とかなるとしか考えてねぇ俺だって嫌だわ。うちの親父たちだって、娘が欲しかったと言えど、嫁で良かっただろうに、戯けたヤツらから引き取って育てる位だ。傷付いた唯来を幸せにしてやろうと、大切に育てて来たんだ」



「「「『…………』」」」



「唯来は、葉山家の本物の家族にさせて貰う。俺らのどっちが継ごうと、唯来は渡さねぇ」



「どうすると?」



ついにキレてしまったお兄様は、お役御免とばかりにネクタイを外し、慧斗さんと睨み合う。
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