【短編】貴方だけを愛しています
「どうした」



「ううん。何でもないよ」



ただでさえ、物心ついた頃から隠してた想いを、なくす時が来る。

養子に出された事。

友達と離された事など、色々な悲しみを飲み込めるほど、恋い慕うたっちゃんとは、結ばれなくなる。



「おはよ……」




「おはよう、将也お兄様」



「んー……」



「コーヒーと朝食を」



「畏まりました」



葉山の両親より。

そして、私たちより遅く起きて来た将也お兄様。

挨拶をすると、お母さんがお手伝いさんに声を掛ける。



「唯来ちゃん。そろそろヘアメイクしないで大丈夫?」



「……うん」



迫る時間。

ダイニングに居るお母さんがわざわざ言いに来た為、重い腰を上げてリビングを出た。

自室へと行き、ドレッサーチェアに座り、コテを温める間に、メイク。

切り替えベルトの付いたブラックワンピに合わせ、口紅だけ明るめにして、アイシャドーやチークは控え目に。

軽く毛先を巻いて高い位置でポニーテールにし、リボンゴムで纏める。

お母さんからのお下がりである赤い本革のフォーマルバッグへと財布やスマホなどを入れて1階に戻ると、やる気のない将也お兄様は、私が座ってたソファーで横になって居た。
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