【短編】貴方だけを愛しています
気に入ってくれてるなっちゃんにバイバイだけしに行き、着替えて退勤。



「お疲れ様」



「あの、葉山さん……!」



「何?」



私より先に更衣室へと向かってた飯田さんからの待ち伏せ。

挨拶だけはと声を掛けて駐車場へと向かおうとすると、大人しく駅の方へ足を向けた飯田さんに、呼び止められる。



「私、向いてないのかな……。辞めた方が良いのかな……」



振り返ると、退職の相談。

何で私に訊ねるのかと、呆れながら「好きにすれば良い」と答える。

寒いし、早く帰りたい。



「止めてくれないの……?」



「止めて欲しいの?」



「…………、」



「私も新人なの。飯田さんが向いてるか向いてないのかなんて、判断出来るわけない。辞めたいなら辞めて良いと思う。貴方の自由。迷うなら、大宮ーオオミヤー先輩に訊いたら?」



「……ごめん……」



私からの回答を諦めてくれた飯田さん。

「それじゃ」と駐車場へと向かう。



「たっちゃん?」



「お疲れ」



車の影に見えた人影。

近付いて見れば、たっちゃん。



「どうしたの?」



「休日出勤のついで。休日出勤がついでかも知れねぇけど」



「たっちゃん!」



ついででも良い。

理由など関係なく、こんなにも早く会えて嬉しい。
< 24 / 88 >

この作品をシェア

pagetop