【短編】貴方だけを愛しています
「たっちゃん、寒い?」



「別に……」



「コート借りるよ」



「脂肪付けろよ」



「付いてるよ。ゼロじゃない」



後部座席に置かれたたっちゃんのコートを膝に掛け、温もりを足す。




「お前、外でたっちゃん言うなよ」



「ちゃんと兄妹する……筈だよ」



「“筈”ってな――…」



「お父さんたち……纐纈の家族と話すかわからないもん。会うの、養子に来てから初めてだもん」



「…………」



「年賀状には決まって、“家族仲良くしてますか?”だよ。それしか言えない人たちと、話したい事はない」




「まあ、そうだろうな」



「……結婚決まったら、私はどうなると思う?」



「何が?」



「お姉ちゃんと咲来のどちらが選ばれるかはわからないけど、同居を決めたら?私は出なきゃいけないでしょ」



「俺も居るのに、新婚の時から同居しないだろ」



「そうじゃなかったら?」



「俺と出れば良いだろ」



「たっちゃんか将也お兄様のどちらが継ぐか決まってないんだよ?そんな簡単に行くのかな……。私が親なら、ちょっとお兄様は怠けてると言うか……」



「褒めてくれてありがとな」



褒めるところしか、ないと言えばないけどね。
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