【短編】貴方だけを愛しています
「破談になれば良いのに……」



「唯来が嫁になるとかな」



「たっちゃんなら、考える」



「お前も口は上手いな」



「当たり前じゃない」



たっちゃんだけを見て。

たっちゃんだけを想って、生きて来たんだから。

他の人じゃダメなの。

私には、たっちゃんしか居ないんだ。



「まだ寒いのかよ」



「寒くないの?」



「ヒートシャツ着てるしな」



それから到着までは無言。

家から一番近い纐纈のホテルに着き、車寄せに停まった車から降りる。

コートを返す気はなく、チェスターコートの上から肩に掛ける。

車のキーを預けたたっちゃんにエスコートされながら中へと入ると、ようやく空気が暖かく感じる。

エレベーターに乗って最上階へと行き、纐纈の父が好きな中華のレストランへと行く。

入り口でコートとマフラーを預け、また少し寒さを感じながら案内されて中に入ると、テーブルの並びが変えられており、貸切。

上座に的渕家が座り、左右に纐纈家と葉山家が向かい合う形で座ってる。

軽く会釈し、たっちゃんが引いてくれた椅子に座る。



「綺麗に育ったな、唯来さん」



俯き、カイロをモミモミしてると的渕頭取が、私の名前を出した。
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