【短編】貴方だけを愛しています
顔を上げると、たっちゃんは的渕家を顎で指す。



「唯来さん」



「はい」



「僕は、貴方を結婚相手に選びたい」



「ごめんなさい」



「「フッ……;;」」



仕方なく顔を向けると、慧斗さんは立ち上がり、何故か私を結婚相手に指名して来た。

スプーンをたっちゃんのお皿の上に置きながら即行で断ると、将也お兄様とたっちゃんが、鼻で笑って来た。



「唯来!喜んで受けなさい!」



「はい……?」



「纐纈の運が懸かってるんだ!」



「私は、葉山の人間です。いくら纐纈さんと深いお付き合いでも、呼び捨てされる筋合いも、運を背負わされる理由もございません」



「唯来さん。纐纈さんの事は一旦置いておくとしまして、僕は、貴方に一目惚れ――…」



「ごめんなさい」



「「ククッ……;;」」



「何ですか?お兄様たち;;」



「早ーよ、返事が!迷ってやれよ;;」



「何で迷わなくてはいけないんですか。私は、この政略結婚に関しては、ただ家族として来ただけです。巻き込まないで欲しいです」



「でも、元は貴方も纐纈家のご令嬢です」



「…………」



「捨てられた、ご令嬢な」



「「将也!;;」」



お兄様たちには笑われ、纐纈家からは疎ましく見られる。

慧斗さんからはまじまじと見つめられ、居心地が悪くなって来た。
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