Memorable
我が家の主導権は絶対的に父が握っていたため、母が私のこの結婚に何かを言うことができなかったことは理解している。それに、母もまた秋久のためなら何でもする。

「大丈夫」
諦めに似た気持ちもありつつ、笑顔を見せると、母もほっとした表情を浮かべた。

「引き継ぎ、してしまうね。きっと秋久様が連れてきた方だから、優秀な人だと思うから」
感傷的な話はしたくないし、もちろん愚痴など言いたくない。泣き言になりそうな気がして、私は立ち上がり、それだけを母に伝えて廊下へ出た。

「古都さん」
待ち構えていたように、掃除をしていた砂羽が私に声をかけた。

「少し仕事で、私は秋久様のお手伝いをすることになったの。旦那様たちも戻られるし、新しい人の補充だわ」
その言葉に砂羽は少し複雑そうな顔をした。

「古都さんがいないと寂しいです」
「新しい子たちが入ったら、砂羽がいろいろ教えてあげてね」
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