Memorable
四歳下の砂羽は、妹のような存在だった。砂羽と離れるのは寂しいが、これも仕方がない。

「古都さん……」
今にも泣きそうな砂羽をぎゅっと抱きしめ、私は砂羽に笑顔を向けた。

秋久が連れてきた人たちはどれも優秀で、父がいることから、私の引き継ぎの必要はほとんどなかった。
早めに離れの自宅へ戻り、実感のないまま大きなスーツケースを用意した。
なんとなく初任給をもらった時に購入したものだが、結局一度も使うことがなかった。それがこんな形で使われることになるとは思ってもみなかった。

感傷的になりそうな気持ちを抑えながら、身の回りの物を詰めていく。
洋服はシンプルなものが多く、あの秋久の隣に立つにはどうかとも思ったが、持っていかなければ着るものがない。
数着の服を詰め、最後に誰にも内緒で書いている日記を底に隠すようにしてしまった。

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