Memorable
そんなことすら疑問に思うことなく育ったが、成長するにつれ現実が見えてくる。それが悲しかったことは誰にも話していない。
そのころようやく、自分と秋久とは全く違う世界に生きていることを悟った。そして私は、すべてを受け入れることができなかった。

父に言われるがまま、大学に進学し資格を取り、父の後を継ぐべく一緒に仕事をし始めてもう数年になる。

今日も何も変わることなく仕事をしていたが、三年ぶりにいきなり帰ってきた秋久は、仕事中の私を呼び出すなりこの話題を口にした。



「古都、なんでいきなりそんな話し方をするようになったんだ?」
じっと今まで表情を変えずにいた秋久が、少しだけ真剣そうな表情を浮かべて言葉を発した。
「子供のころはよく関係を理解できませんでしたが、今は違います」
淡々と仕事のように答えれば、秋久は納得したようにため息交じりに「ふーん」とだけ言う。

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